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あの桜を忘れない

車椅子のまつわる話のタイトルイメージ
車いすの女性

介護の仕事を始めて間もないころ介護施設に勤め、 外出レクリエーションに参加しました。 ご利用者様とのコミュニケーションもまだあまりとれていない時期。 私は一人の車いすの女性の担当になりました。
その方はちょうど私の母ぐらいの年齢、 70歳ぐらいの方で認知症もなく普通にお話をさせていただける方でしたが、 骨折されたあと車いす生活を余儀なくされていました。 ただ、施設内ではあまりほかのご利用者様やスタッフと自ら進んでお話をされることもなく、 私も冗談を言ったり気軽に接することができませんでした。

介護のイメージ
でこぼこした道での車椅子操作

またご本人は、できるだけ早くご自分で歩行されるようになりたいと思っていらっしゃり、 スタッフにトイレに連れて行ってもらうことにもたいへん気を遣われていて、 トイレにご一緒すると「ごめんなさい」「すみません」と何回もおっしゃっていました。 その度に逆に、こちらがそんなことを言わせているのかと思い申し訳なくもなり、 なかなかその方との「心の距離」も縮まっていかなかったことを覚えています。
そして、初めての外出レクリエーション。 場所は近くの公園でのお花見でした。車いすを押して移動するのですが、 車いす対応のバリアフリーなども充実しておらず、 公園内の道はでこぼこ、大きな段差も何か所かあり、 車いすの上でその方の体が少しでも上下するたびに冷や汗が出てきました。 後から知ったことですが、でこぼこした道では前輪を浮かせて後輪を滑らせるとか、 また、早く通りぬけた方が逆に滑らかに進むということも当時はわからず、 ただ怖くてゆっくりと、でこぼこしながら進んでいきました。

満開の桜のイメージ
女性と一緒に見た桜

ゆっくりとスティッピングバーを踏みながら段差をあがると、 ちょっと小高くなったお花見の場所に。その日は花見には盛りを少し過ぎたころで風も強く、 桜は絨毯となって地面につもり、花びらは吹雪のように宙を舞っていました。 そして、その女性の髪や服にも桜の花びらがはらはらと降り注ぎました。 すると、その方が施設で見せていた不安げでさみしげな表情は一変。 顔を空に向け、とても華やかな表情で、落ちてくる桜の花びらを 両手で懸命にすくっていらっしゃいました。 そのとき、その施設に勤め始めてから初めて私の名前を呼んでくださり、 「あなたとここで見た桜、これからもきっと忘れないわね」とおっしゃったのです。

桜と青空のイメージ
車椅子を押すことに緊張していたことはお見通し

そして、帰り道、車いすで段差を降りるとき、 (段差を降りるときは、段差に沿って後輪をおろして 前輪を浮かせながら、下の段に着地する……) などと頭の中で手順を思い浮かべながら車いすを動かし、 なんとかスムーズに降りることができた私に、 その方は「うまい、うまい、上出来よ」とおっしゃいました。 それは決して冷やかしではなく、私への励ましでした。
さらに、施設へ戻る途中、「お疲れになったんじゃないですか?」 と声をかけた私に、「あなたこそ、疲れたでしょ。ありがとう」と言われました。 私が初心者なこと、汗をかきながらやっていたこと、車いすにも不慣れなこと……。 すべてその方にはお見通しだったのです。

車椅子のイメージ
車椅子を押す人と押される人は一心同体

車いすとそれを押す人……。乗っている人は、 押す人に自分の命を預ける気持ちで乗っていらっしゃるでしょう。 押す側もそのことを十分承知しています。 まさに一心同体、車いすもあわせて信頼関係で成り立っている三位一体なのだと思います。
下り坂の急加速や段差での転倒など事故防止のさまざまなアイデアや仕組みが考られ、 車いすも日々進歩しているとききます。それにともない、押す側の知識やスキル、そして信頼関係で、 さらに安全で高度な三位一体を目指すことができればと、当時の自分を戒めつつ思います。
 あれからもう4年。あのときの職場も離れ遠くの地で暮らしている私ですが、 桜の季節になると、あの方は今どうされているのだろうと思い出されます。 そして、私も、あの方と一緒に見た桜を、今も忘れていません。

桜の花のイメージ

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