私の父は昨年病気で亡くなりました。
父は仕事人間で私が幼い頃からあまり顔を合わすこともありませんでしたが、
慣れない入院生活と病気の治療でとても苦労していたはずなのに、
お見舞いに行くと親父ギャグを言って私たちを笑わせてくれていました。
でも、日に日に貫禄のあった大きな体はしぼむように痩せて細くなり、
お見舞いに持って行った父の大好きなゼリーもすぐに食べなくなってしまいました。
私たちは父のために何かしてあげたいと、
入院生活が始まってすぐに相談していました。
それは医師から病気の転移が早くこれ以上手術は出来ないと聞いたからです。
余命半年だとも伝えられ、父の好きなことをさせてあげたいと強く思いました。
父は体力保持のために病院内をよく散歩していました。
看護師さんより自動販売機で何が売っているか知っている程でした。
でも、長時間歩くことは困難な状態だった父に
何をしてあげれるだろうと家族で何度も相談しました。
この時こそ、今までもっと父と話をしていれば良かったと
悔やんだことはありませんでした。
この時、父は何かして欲しいことやしたい事はないか聞いても、
そんなに気を使わなくていいの一言で返していたからです。
ある日、テレビを観ていると旅行特集をしていました。
京都の天橋立がテレビに映っていました。
すると母が天橋立は行きたかったけどまだ行ったことがないと言うので、
もしかしたら父も行ったことがないのではと思い聞いてみました。
父も母と同じで行ったことがなく、一度行ってみたいと思っていたと言のです。
私は病院の帰りに旅行会社に行き、早速旅行に行く手続きをしました。
一泊二日の短い旅行ですが、父にしてあげれる事が見付かって皆で喜びました。
医師に旅行のことを伝えると、良い思い出になるでしょうと喜んで許可してくれました。
しかし、長時間歩くことが出来ない父を旅行先で
どうやって楽しませてあげれば良いか分からず
医師に相談したところ、車椅子を推められました。
親戚にもその事を伝えると、すぐに車椅子を購入してくれました。松永製作所のDM-81です。
旅行先で初日は小雨が降っていたのですが、
この車椅子は道が濡れていても重く感じることがなく
スムーズに父の足として役立ってくれました。
砂浜に降りて海を近くで見たいと言う父のために主人が車椅子を持ってくれました。
DM-81は畳めるし頑丈なので助かりました。
砂浜まで歩いた父は疲れたようでしたが、
車椅子に座ってしばらく海を眺めて何か考えているような姿が今でも忘れられません。
旅館の食事も豪華で父はとても喜んでくれました。
誕生日が近い父のために旅館にお願いしたバースデーケーキに驚き、
照れながらローソクを吹き消していました。
家族写真を旅館の方にたくさん撮ってもらいました。
車椅子があったから父を旅行に連れて行くことができました。
もし車椅子が無かったら今回の旅行はキャンセルするしかなく、
こんなに父との楽しい思い出もありませんでした。
父の足代わりになってくれた車椅子に感謝しています。
そして、車椅子を推めてくれた医師にも感謝しています。
現在、その車椅子は実家の駐車場の隅にカバーを掛けられ眠っています。
スチール製なので、使っていないと錆びやすくなってしまいますし、
父の治療を熱心にしてくださった医師や父の親父ギャグに
思いっきり笑ってくださった看護師さんたち、
そして父が長く入院していた病院に感謝の気持ちとして
近いうちに寄付しようと思っています。
家族みんなの許可は得てあるので大丈夫です。
きっと父も天国から賛成してくれると思います。
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