私の祖母は昔脳卒中で倒れてから車椅子生活をしています。
足だけでなく手も不自由になってしまっているため一人では車椅子でも出かけることが難しく、
思うように動くことのできない自分に苛立ちを覚えているような時もありました。
そんな祖母と一緒に出かけた時の周りの方の気遣いで嬉しかったことがいくつかあります。
夏休み、当時小学生だった私と祖母が二人で散歩も兼ねて買い物に出かけていた時の出来事です。
棚の上の方に買いたい商品があり、その商品を取ろうとしていたのですが背の低かった私はなかなか取ることができずにいました。
そのとき、たまたまそばにいた若い男性が「どれですか?」と声をかけてくださり、その商品をとってくださったのです。
それだけでもとても嬉しく、その場はお礼をいって買い物を続けようとその場を離れようとしたとき、
その男性が「時間あるので車椅子押すの手伝いますよ。
また取れないものあるといけないので。」と言ってくださったのです。
申し訳ないからと二人で断ったのですが「ここで会ったのも何かの縁ですから」と本当に親切にしてくださいました。
その後、一通り買い物を終え男性とも別れた後
エレベーターに乗ったのですが、ここでも嬉しい出来事がありました。
そのエレベーターはとても狭く車椅子が乗ると他の人は乗れなくなってしまうくらいの大きさです。
ですので、いつも誰も乗っていない箱が来るのを待ってから乗るようにしていました。
もちろんその時もそのつもりでエレベーターを待っていたのです。
夏休みということもあり、最初に来たエレベーターは
幼稚園児くらいの小さいお子さんと親御さんでいっぱいでした。
次のエレベーターを待とうとしていると、
乗っていたお子さんの一人が「僕たち降りるから先にどうぞ」と言って
親御さんの手を引いてエレベーターから降りたのです。
すると他のお子さんも「どうぞ」と明るく声をかけて次々と降りてくれたのです。
また、親御さんたちも笑顔で「先に乗ってください」と声をかけてくださり、
結局エレベーターに乗っていた方みなさん降りて代わりに私たちを乗せてくださいました。
今まで車椅子に乗って狭い所を通っていると「邪魔だ」と言われたり、舌打ちをされたり、
睨まれたりと、本当に祖母はつらい思いをしてきました。
それを知っていたからこそ、この日の二つの出来事は本当に心に残り今でも鮮明に覚えていますし、
言葉では言い表せない程の温かい気持ちにさせていただけました。
この日家に帰ってから嬉しそうにこの出来事を思い出していた
祖母の目に涙があったこと、私は忘れないでしょう。
現在バリアフリー化が進んでいます。
階段ではなくスロープにしたり、車椅子に乗っていても自販機や券売機が操作しやすいように設置されていたりと
確かに住みやすくはなっていると思います。
しかし、本当のバリアフリーとは行動のしやすさだけではなく、
人の思いやりもあって完成するものなのだと感じています。
困っているようであれば声をかけてみる。
ただそれだけで、声をかけてもらえた方の気持ちは救われるのです。
私も会社員として社会にでるようになり、様々な経験をしてきました。
心ない言葉をかける人も世の中には沢山います。
言葉に出さなくても厳しい表情で見てくる人もいます。
しかし、そんな世の中にも優しく親切な方がいることに間違いはないのです。
申し訳ないからと二人で断ったのですが「ここで会ったのも何かの縁ですから」と本当に親切にしてくださいました。
車椅子を利用している人の気持ちを完全に理解することは、
利用したことない人からしたらとても難しいことかもしれません。
しかし、理解しようとすることはできるのではないでしょうか。
たった一言「大丈夫ですか」と、これだけで良いのです。
せっかく同じ世の中で生活をしているのだから、お互いに気持ち良く生活できる世の中になっていけばと願っております。
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