

福岡は「西鉄バス」が交通の多くを占めており、私も高校に入学してから約7年間、通学や遊びの時は必ず「西鉄バス」を利用していました。
そんな私が見た西鉄バスでの話です。
大学四年生の頃、私は家庭教師のアルバイトを週三日していました。そのうち二日は決まって同じ時間の同じバス停から「西鉄バス」を利用していました。ある日、たまたま早めの時間にバス停に到着し、家庭教師先へ行くバスを待っていました。
しばらく待っていると駅まで行く番号のバスが来ました。乗ったことのないバスでしたが、毎回このバスが来ると乗客は「並ぶ」なんて関係なく押し寄せるように乗り込みます。

本数が少ないバスや乗客が多いバスは大抵乗り込む人は並ぶことが少ないので、私にとってこれが当たり前の光景でした。
しばらくバスの様子を見ていると、最後の方に「車椅子」に乗った人がバスの近くまでやってきました。
バスの運転手はすぐにバスから降り、ハッチを開いて車椅子が乗車できるように乗車台を出しました。
運転手と車椅子の人が話している様子から、よくこのバスを利用することがわかりました。しかし、すでにバスの中は多くの人が乗っています。その時、車椅子の人が乗れるスペースがあるか心配でした。

ところが、バスを見るとすでに「車椅子が乗車できるスペース」ができていました。
それどころか、車椅子を押す運転手を手伝う人や、乗客の中には車椅子の人に手を貸している人もいました。今まで何度も西鉄バスを利用していましたが、このような光景を見たのは初めてでした。
しかし、最初は「ここのバス停はよく利用する人がいるから当たり前の光景なんだ」と、自分の中で考えていました。
それから約一ヶ月後、別の西鉄バスに乗っていた時のことです。その日は昼に用事が済み、家に帰るためバスに乗車していました。その日は乗車している人は少なかったと思います。

バスが病院の近くのバス停に差し掛かった時、車椅子の女性がバス停で待っていました。
バス停に着くと、運転手がバスから降りて乗車台を出し、車椅子の人をバスに乗せる手助けをしていました。
乗客の車椅子の方が乗降する際は運転手がどこで降りるか把握して手助けしているのをよく見かけますが、運転手の手際がたどたどしい様子から、その女の人はこの時間のバスを利用するのは初めてのようでした。
前回のバスの件を思い出し、私は運転手がどう対応するか見ていました。

すると、運転手は「どこで降りられますか」と女性に尋ねていました。女性の方は二停先のバス停の信号あたりで降りたいという旨を伝えていました。
運転手は運転席に戻ると通常通りに発車しました。
そして目的のバス停付近に到着し、「この付近でいいですか?」と女性に確認して停車しました。運転手が降車の手伝いをすると、女性は嬉しそうに「ありがとうございます」と言っていました。
そしてバスがバス停に到着すると、運転手は乗客に遅れたことを謝罪していました。
この光景を見て、初めて福岡のバスに感動しました。運転手の判断ももちろん素晴らしいですが、車椅子の女性だけではなく乗客の方への配慮もきちんとされていており、その時の乗客の中で不満な顔を見せる人はいませんでした。

「バリアフリー」などの言葉を物心ついた時から様々なところで聞いてきましたが、スロープやエレベーターなどがあるだけではないと気付きました。
このとき私は、本当の「バリアフリー」とは周りの気遣い一つでできることをバスから学びました。
車椅子に乗っている方の中には、公共交通機関を利用する際は迷惑をかけるのではないか、などの不安を抱えている方も多いかと思います。
そのような不安をなくすためにも、まず一人でも多くの人がその不安を理解し支えていくことが大切だと改めて気づかされました。
バスという公共の場で、運転手さんの対応と、それに対する乗客の皆さんの寛容さが重なる、本当に素晴らしいエピソードですね。
車椅子をご利用の方から伺うお話の中で、最も多いのが「バスに乗る時の罪悪感」です。「迷惑をかけているのではないか」「周りにどう思われているか」という不安は、実は設備よりも先に「周りの方のちょっとした一言や笑顔」で解消されることが多いのです。
この体験談のように、誰もが自然に支え合える空気感こそが、本当のバリアフリーの姿なのだと改めて感じました。私たちも、車椅子をご利用の方々が安心して外出を楽しめるような製品選びや情報発信を、これからも続けていきたいと思います。
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