

自宅の近所に、ゴールデンレトリバーのような大きな犬を飼っている家がありました。体長は1メートルほどある大型犬でしたが、通りすがりの人にも吠えないとてもおとなしい性格でした。
以前はその家のお嬢さんが散歩させていたのですが、彼女がお嫁に行ってからはお母様が散歩をするようになりました。大きな犬にじゃれられて困ったように笑いながら歩く姿が、とても印象的でした。

しかしある日、そのお母様が救急車で運ばれ、しばらく入院されることになりました。その間、寂しそうに庭でじっとしている犬の姿を見かけることもありました。
しばらくして退院されたのですが、帰ってきたお母様は車椅子に乗っていました。足の筋力が弱ってしまう病気だったようで、一人暮らしが難しくなり、娘さんご夫婦が同居してお母様の面倒を見るようになったそうです。

車椅子になっても、お母様は相変わらず優しい笑顔のままでした。当初は手動の車椅子を使っていましたが、やがて電動車椅子へと替えられました。
その頃には娘さんにも2歳くらいのお子さんができ、おばあ様は孫を本当に可愛がっていました。孫にとっても車椅子のおばあ様は大好きなおばあちゃんそのもの。車椅子に乗っていることはあまり意識していないのか、車椅子ごと「ばあば」だと認識している様子が微笑ましかったです。

出張で3年ほど家を離れ、戻ってきて驚きました。あんなに小さかったお孫さんが、すっかり元気に走り回る男の子に成長していたのです。
ある日、犬の散歩風景を眺めていると、リードを引いているのは娘さんではなく、あのお孫さんでした。犬はおっとりと順調に歩き、その後ろから、電動車椅子を操っておばあ様がすいすいとついて行きます。

公園で休むときも、孫は小さな手でしっかりと車椅子を支え、犬は車椅子にぴったりと寄り添っていました。孫が「ばあば、大丈夫だよ」と笑いかけると、おばあ様も嬉しそうに頷く姿が見えました。
昔よりも少し歳を重ねられたおばあ様でしたが、そのシワの混じった笑顔から幸せが溢れているのが伝わってきました。電動車椅子が、この家族にまた新しい散歩の時間をもたらしたのだと思うと、こちらも温かい気持ちになりました。
「電動車椅子が家族の新しい足になった」という、とても素敵なエピソードですね。
小さな子どもにとって、おじいちゃんやおばあちゃんの車椅子は、特別な「乗り物」や「おばあちゃんの一部」のように見えるのかもしれませんね。犬とお孫さんと一緒に、車椅子で公園まで散歩する。そんな当たり前の日常が、病気を経ても守られていることが何より素晴らしいです。
電動車椅子があるからこそ、おばあ様も自信を持って外に出られ、家族の散歩の輪に加わることができる。道具の進化は、こうした「家族の時間」を繋ぎ止めるための、目に見えない絆のようなものなのかもしれません。
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