

それは私が介護ヘルパーの資格を取るために学校へ通っていた時のことです。帰り道によく、とても筋肉質でスポーツマンのような男性を見かけました。車椅子は形状から日進医療器のアクティブ車椅子だと思われます。
驚いたのは、その方がいつも車椅子でエスカレーターに乗っていたこと。初めて見かけた際に「大丈夫ですか?後ろで支えましょうか?」と声をかけると、「大丈夫です」と涼しい顔で簡単に乗ってしまいました。車椅子は小回りがきき、幅も狭いため、横を人が余裕を持って通れるほどです。無駄のない作りで、人混みの中でも違和感なく溶け込んでいたあの姿は、当時の私にとって衝撃的でした。

それまで私は「弱った人が乗るもの」という勘違いをしていましたが、その方の堂々とした安定感が私の思い込みを正してくれました。
介護の授業で先生が「車椅子では一人でエスカレーターに乗れないので介助が必要」と言った際、私は見たまま「スポーツをやっているような方が、車椅子でエスカレーターを上っていった」と発言しました。しかしクラスの仲間からはクスクスと笑い声が上がり、「見間違いではないか」と言われてしまいました。先生からも「車椅子のスポーツも盛んだが、エスカレーターの件は輸入車椅子ではないか」といった反応でした。

指導に来ていた先生は日本の車椅子の進化をご存知なかったのかもしれません。車椅子に乗る人=弱った人という固定観念が、教室中に根付いているように感じました。
その後、理学療法士の先生が車椅子の乗り方を教えてくれました。実際に体に重りをつけてみたり、片手片足で動かしてみたりと体験することで、操作の難しさや体力の消耗を実感しました。基本的な操作だけでなく、段差を越える方法など、驚きの連続でした。

理学療法士の先生は「車椅子利用者には若い方も多く、何らかの障害で歩けなくても上半身は元気な方が多い。彼らは高い段差も介助なしで勢いよく上る」と教えてくださいました。
エスカレーターの男性の姿から始まり、先生の指導を通じて、私の「車椅子は弱っている人が乗るもの」という勘違いは完全に消えていきました。

利用者の身体機能を考え、あれほど自然に動けるよう研究を続ける車椅子メーカーの技術力にも感銘を受けました。
正直なところ、当時ただ資格を取りに来ていたクラスメイトたちよりも、その車椅子の男性のほうがずっと活き活きして見えました。きっとスポーツという目標と希望を持っているからなのでしょう。私も、自分の中にしっかりとした希望を持って前向きに頑張っていこうと、深く心に刻んだ出来事でした。
「道具の進化」と「心の持ちよう」の両方が重なって、初めて車椅子がその人の「体の一部」になることを教えてくれる、とても良いお話ですね。
福祉用具は進化し続けており、アクティブに動きたいという願いを叶えるための車椅子は、今や驚くほど機能的でスタイリッシュです。 「弱っている人が乗るもの」という認識は変わりつつあり、今はそれを「自分の可能性を広げるもの」として捉え直す時代です。男性が活き活きとしていたのは、車椅子が単なる「移動手段」ではなく、自分の意思をそのまま路面に伝える相棒だったからこそでしょう。
私たちも、そんな一人ひとりの「活き活き」を支える一台をご提案していきたいと思います。そして、今後のさらなる車椅子の進化には本当に期待しています。 いつか、エスカレーターやどんな段差も、誰もが安全にスイスイと移動できるような未来が来たらと想像するだけでワクワクしますね。
※注釈:現在、車椅子でエスカレーターを利用する行為は、転落や巻き込み事故の危険性が非常に高く、メーカーでも禁止されています。 当記事では状況をありのままに記載しましたが、スポーツタイプの車椅子であっても、エスカレーターでの利用は絶対に避けてください。公共施設では必ずエレベーターやスロープの利用をお願いいたします。
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