車いすを利用する人は、足を悪くされている方がほとんどでしょう。私の父もそんな一人です。父は脳梗塞により右半身に麻痺の症状がでました。
当初は程度も軽く自力で歩いたりすることもできましたが、年をとるにつれてなかなかできなくなってきました。
家の中ではなんとか車椅子を使わずに歩いて移動することができますが、外ではそれができなくなります。
その理由は至る所にある段差、慣れない場所を歩く不安感にあります。そのため外では車椅子を利用して移動するようになりました。
そこで車椅子を押すことで驚いたのが、世の中あれだけバリアフリーが叫ばれているのに全くといいほどバリアフリーにはなっていないということです。
まず驚いたのが車椅子を置いている商業施設が少ないということです。
「ここにはあるだろう」と思い行ってみると見事に期待を裏切られるということが多々あります。
また置いてあったとしても10年以上も前のものと思われる少し錆びたようなものを目にすることもあります。
車いすに父を乗せて移動しようとすると、タイヤが壊れていて進めないということもありました。メンテナンスもされていないのでしょう。
車椅子というものは確かに少し値段が高いものなのかもしれませんが、大きな商業施設で用意できないものではないでしょう。
しかし古いものを置いているということは、そこには形だけの用意であり、使用者へ意識を向けていないということではないでしょうか。
また、車椅子があるところでは身体障碍者用に駐車場も用意されているのですが、
それも車椅子での乗り降りを検証した形跡もなく、ただ用意しただけという印象を受けます。
駐車スペースの地面が水平ではなく、斜めになっている所などでは、
車から降りて車いすに移るとき、ブレーキをかけていても車いすが動いてしまうことがあり危険に感じることがあります。
また、足の悪い私の父は少しでも斜めになっている地面ではうまく立てなかったり、移動できないこともあります。
地面が斜めになっているのは、おそらく雨水などが建物から敷地の境界の
側溝に向かって流れるような構造になっているためと思いますが、
だとすれば障害をお持ちの方々のことを考えて作った駐車スペースとは言い難いでしょう。
身体障碍者用の駐車スペースが、車の通る通路のすぐ脇にあったり、 そもそもスペースが狭すぎて車椅子を下ろす事が難しい場所もありました。 これでは安心して車への乗り降りができません。 車の通る場所では、車がいつ来るのかを気にしたり、 待たせてしまうことが気になって、うまく車いすに移動できなかったりすることもあります。 このように健康な体の人であれば何とも思わない場所が、 車椅子利用者とっては、とても不便な難所になってしまうのです。
父が車いすを利用するようになって初めてわかりましたが、世の中のバリアフリーはまだまだ建前であり、
障害のある人や、その家族の身になって考えていないというように感じます。
段差をなくしたり、さまざまな場所で、身体障碍者優先のスペースや施設を用意したりしていますが、それで終わりとなっているのではないでしょうか。
本当のバリアフリーとは、場所や物ではなく、人の心にあるのだと思うようになりました。
私が前述した例でも結局は人が作ったり準備したりしたものです。
その人の考え方が変わらなければ、同じような場所はバリアフリーの名のもとにどんどん増えていくのではないでしょうか。
言い方が厳しいかもしれませんが、あたかも良いことをしているようなつもりで実は役にたたないものを増やしていくようにも思います。
このような状況を改善するには、もっと身体障碍者やその家族、身の回りの人の声を真摯に拾い上げることだと思います。
正直私も父が車いすを利用するまでは、こんなことは考えませんでしたし、また気づきませんでした。
そんな私であってもこうやって考えるようになったので、私以外にも同じようなことを感じたりしている人はいると思います。
その人たちの声を拾い上げ、さらには社会に広めていくことが本当のバリアフリーへの第一歩ではないでしょうか。
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