

母が足の骨を折り車椅子で生活していた時の話です。車椅子を使用していて何よりも大変だったのはやはり外出時の介助でした。悪いことに当時住んでいた家は高台にあり、そのため四方に坂があります。
たまには外の空気を吸わせてやりたいですし、ちょっとした買い物で気分転換をさせてもやりたい。また、母は歯も悪くしていましたので、近所の歯医者さんに定期的に通うという用事もありました。そうした外出をする際、坂道を通らないわけにいきません。
その介助がなかなか骨の折れる仕事でした。登り坂はまだいいのです。体力は必要ですが、神経を使う必要はありません。大変だったのは下り坂。それほどの勾配でなくても、少しでも下り坂になっていると神経を使います。「もし、この手が離れてしまったら」と、条件反射のように想像してしまうのです。その恐怖は、けっして小さなものではありません。体力も使ったのでしょうが、それをまったく記憶していないぐらい、精神的に堪えました。

口には出しませんでしたが、母も同じような想像をしていたにちがいありません。その証拠に、体は弱っても口の達者だった母が、下り坂になるとまったく口をきかなくなってしまうのです。緊張していた証拠でしょう。
一番の難所はそのように下り坂なのですが、他にも困る道や場所があります。1つは、アスファルトでない道。商店街などで、おしゃれなデザインをしたブロックの舗道などになっていることがあります。
見た目はきれいなのですが、車椅子で歩くと、そのでこぼこが、車椅子に乗っている母に振動を与えてしまうのです。たまにちょっとした段差に気づかず車椅子を押してしまうと、その激しい振動に母は小さな悲鳴を上げることもありました。足の骨を痛めている母にとって、少しのでこぼこでも骨に響いてしまうのです。

もう1つの難所が踏み切りです。車椅子を押して踏み切りを渡るときも大いに気を使います。電車が来ていないことを確かめて渡り始めるのですが、電車の混む時間帯だと、すぐに遮断機が下りてしまいます。遮断機が折りきる前に渡り終えなければなりませんから、これにも神経を使いました。
自宅の近くに1箇所、特に気を使う踏切がありました。そこは線路と道路が直角ではなく、斜めに交差しているのです。最初にそこを車椅子で通ったとき、斜めに交差している線路に注意しなかったため、車椅子の車輪が線路の隙にはまりそうになってしまいました。
幸い、完全にはまってしまったわけではないので、無事渡りきることができましたが、運悪く車輪がはまってしまったらどうなっていたことか。今思い出してもゾッとします。

このように、車椅子の介助をして外出する際には、気をつけなければいけないこと、神経をすり減らす道がいくつもあります。しかし、それを別にすると、今の車椅子は大変よくできていますので、おそらく経験したことのない人が想像しているよりも、数分の一の力で押すことができるはずです。
私は最初に車椅子を押したときに、「えっ、こんなに小さな力でこんなにスムーズに動くものなんだ」と驚き、感動したものです。その意味で、車椅子の介助は女性でも無理なくできますし、危険性も少ないといっていいでしょう。
問題なのは「道路事情」と「踏み切り」。これは何度経験しても慣れて楽になるということはありません。かえって慣れてくると気を抜きそうになり、ハッとすることがあります。車椅子を介助する際は十分に気を付けて使用したいものです。
高台での生活、日常の買い物や通院といった何気ない外出が、これほどまでに神経をすり減らすものだとは、ご経験された方にしか分からない重みがあります。「下り坂で母が口をきかなくなる」という描写から、お二人の並々ならぬ緊張感や、介助の現場での大変さがひしひしと伝わってきました。
特に、踏切の斜めの溝や、おしゃれな舗道のわずかな凹凸といった「街中の死角」は、車椅子を利用して初めて気づく難所ですよね。 介助する方が「大丈夫だろう」と油断してしまいそうな場所こそ、実際には一番危険が潜んでいるという教訓は、多くの介助者の方にとっても大切な指針になるはずです。
日常の介助において、こうした路面や段差の衝撃を少しでも和らげたいとお考えの場合は、軽量で操作性の高い車椅子を選んでいただくのも一つの解決策です。例えば、今回ご紹介しているような、軽くて振動を吸収しやすい車椅子であれば、介助する方の負担も減り、乗る方の心身への影響も抑えられます。さまざまな特性の車椅子を取り揃えておりますので、もし介助でのご苦労を感じていらっしゃる方は、ぜひ選択肢の一つとしてご覧くださいませ。
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