祖母は年齢が94歳で頭はしっかりしているのですが、
身体は少しずつ弱っているようで、普段は壁や手すりに手を付きながら歩いています。
最近は畑にもいかなくなり外に出ることさえ減って行きました。
ある日、私は父と話をしているうちに
祖母に車椅子を買ってあげてはいるが、全然使われていないことを知りました。
祖母は近くに住んでいるので私が仕事が休みの日に尋ねてみることにしました。
何かしたいことはないか尋ねると花が見たいと言いました。
ちょうど近くにヒマワリ畑があることを知っていたので祖母にそのことを話してみました。
祖母は「私はいけないねぇ。足がいうこときかなくて。」と言いました。
父から買ってもらった車椅子はどこにあるか聞くと家の外の倉庫にあると答えました。
「車椅子があればどこにでもいけるよ」と私は祖母に言いました。
しかし私には少し不安もありました。
私の車はすこし小さくて車椅子がはたして入るものなのかわかりませんでした。
まず車椅子を確かめる必要性があると思い倉庫に行きました。
倉庫の中には多機能式の車椅子が置いてありました。
少し触ってみると折りたためることが分かり、
思ったよりも小さく折りたためたので「これはいける。」と思いました。
祖母にそのことを告げると「それならいこうかね」と言ってくれました。
祖母が車いすを布巾で拭き上げ私が車に積みました。
思っていたよりも車椅子は軽く、車の中にはすんなり入り、
祖母と私は車椅子を見て何の心配をしていたのかと笑いました。
ヒマワリ畑は公園の一角にありました。
公園につくと早速車椅子に乗ってもらい散策をしました。
祖母は思いのほか楽しそうに車椅子に乗っていました。
抵抗感があるのかと思いましたが何よりも景色を見ながら
スムーズに進んでいることが楽しかったみたいです。
祖母は「車椅子もいいもんね。ベン○みたいやね」と言いました。
その笑顔はいまでも心に残っています。
ヒマワリ畑では畑の中に入ることもできました。
30分ほどの散策でしたが祖母はとても楽しかったといってくれました。
家に帰ると車椅子は倉庫に戻しました。祖母は「またどこかにいこうね」と言いました。
私は次は近所のショッピングセンターに行く約束をしました。
その約束の日には祖母はベ○ツを倉庫から出して自分で運転をして遊んでいました。
94歳にしてその好奇心に私は驚きましたがその姿をみて私は思わず笑ってしまいました。
しかも思いのほか上手に運転をしていました。
フットサポートを下ろしたまま立ったりしないようそれだけは注意をしました。
たまに車椅子を押して歩く練習をしているとも言っていました。
そしてベン○を私の軽自動車に乗せショッピングセンターに行きました。
ショッピングセンターでは車椅子の使用がしやすく
バリアフリーになっているので何の苦労もなく歩くことが出来ました。
エスカレーターは使えませんが所々にエレベーターがあったので上り下りも手間はかかりませんでした、
お店の中ではショッピングカーやベビーカーをひいている人も多く
車椅子がさほど違和感なく過ごすことが出来たのがとてもよかったと思います。
少しずつ社会の中にも高齢者の方が入りやすい環境になっていると感じました。
それはきっと祖母も感じていたと思います。
それから祖母はたまに倉庫から車椅子をだしては自分で運転をしているそうです。
私も花などを見に行くときには祖母に声をかけています。
祖母は「それならベ○ツをだしとかなんね」と言います。
祖母は、自分の車いすをベン○と呼んでいるのです。
それほど乗り心地が良く特別なものに思えたのでしょう。
祖母は明日も倉庫からベン○をだして運転の練習をしているかもしれません。
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