以前骨盤と大腿骨の骨折をしてしまい、入院中は車椅子で移動をしていました。
しばらくベッド上でのみの生活だったのですが、いざ車椅子に乗ってみると視界が異様に低く感じられ、なんだか子供に戻ったような気分になりました。
また始めの頃は、自分で車椅子を漕ぐ許可が下りず看護師さんに押してもらっていたのですが、それもおかしな感覚で自分の身体が左右にひっぱられるようでした。
院内の移動のためにエレベーターに乗せられるときには、 他の利用者がドア方向を向いているのに対して車椅子の私は後ろ向きでした。
頭も低い位置にあるので、人の下半身ばかり目に入って奇妙な気分です。
そのうちに自分で車椅子を漕ぐ許可が出ました。
いざ操縦してみると、カーブをしたりバックをしたりという歩行で簡単な操作が、案外難しいのです。
ちょっと壁にぶつかると、看護師さんに「免許停止されちゃうわよ」と冗談を言われたりしました。
自由に動かせるようになるまではなかなか練習が必要で、漕ぐ腕もすっかり疲れてしまいます。
ですが、それまでベッドから動けなかった私にとって、たとえ車椅子でも移動できるということは、とても嬉しい出来事でした。
そろそろ自分の足で歩けますよと言われる頃にはすっかり上達して、車椅子を手放すのも少し惜しい気分でした。
すっかり怪我も治り、退院した私は不器用ながらも自分の足で歩くようにしていました。
ですが、やはり入院前に比べ疲れやすくなってしまい、外出時に休憩する回数も以前より増えました。
日常的に車椅子を利用するほど病状も悪くなく、今の時代インターネットでの買い物なども充実しているので、わざわざ外へ出るのも億劫になってしまい、家へこもりがちになりました。
ある日友人が外出に誘ってくれたので、せっかくだからと一緒に出かけることにしました。
電車に揺られながらショッピングモールに向かったのですが、その時友人がそのショッピングモールの案内を見せてくれました。
読んでみると、施設内での車椅子貸し出しという文章が。
友人は私を気遣って、そんなことを調べていてくれたのです。
実はその時私はすでに疲れを感じ始めていて、ありがたくその提案に乗ることにしました。
施設内で車椅子に乗ってみて気づいたのが、病院に比べて圧倒的に人が多いことでした。
また病院ではお互いに気遣って移動するのが、こちらではお客さんたちがショップの移動をするためにあちこちへ動くので、なかなか予測もできず非常に操縦がしづらかったです。
お手洗いも多目的トイレを使用することになったのですが、 こちらも数が少ないため待ち時間が長く感じてしまいました。
疲れてしまった私は、車椅子の運転をすっかり友人へ任せてしまいました。
とはいえ友人も不慣れなようで、友人の提案とはいえ大変な思いをさせてしまったと思います。
ですが、施設内で店員さんから案内をされるたびに、店員さんから普段以上のお心遣いを感じることができたので、少しほっとしました。
また中には優しいお客さんもいて、エレベーターでは気遣ってくださる方が多くいらっしゃいました。
他の方には車椅子なんて場所をとって迷惑でしょうし大変恐縮してしまいましたが、気をつけてくださいねなんて声をかけられると、少し嬉しい気分になってしまいました。
飲食店では出入り口で車椅子を降りることになりましたが、店員さんが席までゆっくり誘導してくださって、大きな苦労をせず食事をすることもできました。
私が車椅子を利用する回数は段々と減ってきていますが、やはり利用するたびに周囲の方への迷惑を考えてしまいます。
ですが、私以外に車椅子を利用している方を見かけると、迷惑どころかゆっくりでいいから無理せず気持ちよく移動して欲しいと感じるようになりました。
友人や家族も同じように考えてくれていて、私に安心感を与えてくれています。
まだ自身で利用するときの不安はありますが、「同時にこのように考える人もいるはずだ」という思いも芽生え、以前よりはその不安も薄れているような気がします。
これから車椅子を利用する方にも、是非安心感を持って使っていただきたいと思います。
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