私の祖母の話です。
祖母は若い頃は風邪の引き方を忘れてしまうくらい元気でしたが、60代に入ってからは病気がちになってしまいました。
初めて病気になったときはとてもショックだったようですが、元々がポジティブなので割とすぐに気持ちを切り替えて過ごしてきました。
それでも何度か病気を繰り返すうちに、流石にしんどくなってしまったみたいです。
最初のうちは、積極的に起き上がって話したり、なるべくなら自分の足で歩こうとしていました。
ですが、病気を繰り返すうちに寝ている時間が多くなり話すのも面倒くさそうになって、自分の足で歩くのも面倒になったように感じました。
私は孫として祖母の様子見ていて、凄く辛くてモヤモヤしたことを未だに覚えています。
私は祖母になんとか元気になってほしいという一心で、「私が車椅子を押すから散歩しよう」と言いました。
祖母はこっちをちらっ見て、目を閉じました。
拒否のサインでした。
あまりしつこくても駄目だな、また明日言おうと思い、その日は帰りました。
私は毎日毎日、散歩しようと言いました。
ですが、反応はずっと同じでした。
祖母は病気でしたが、担当医さんの話によると「車椅子で散歩に行けないくらい具合悪いということはないはずなんだけど」と言っていました。
おそらく精神的なことが大きいだろうとのことだったのです。
本当だったら少しくらい外に出たほうが良いんだけどという一言で、私は決心がつきました。
私はある日、少しきつめに言いました。
「おばあちゃんがずっと寝ているならもう来ない」と。
ここだけ切り取れば、なんと酷い台詞でしょうか。
ですが、一応車椅子に乗って散歩には行けると聞いていたから言ったのです。
無理だったらとてもこんなことは言いません。
祖母は私の言葉を聞いた瞬間、ぴくっと動きました。
そして「今日散歩に出たら明日も来てくれる?」と聞いてきたので頷きました。
祖母は最低限身なりを整え、車椅子に乗りました。
基本的にずっと寝ていたせいか、動きがなんとなくおぼつかない印象でした。
あと、私だけでは不安ということで、担当の看護師さんも一緒に来てくれました。
これには凄く安心しましたね。
その日は暖かい日で、散歩に適していました。
日差しも心地よく、椅子に座ったら少し眠くなってしまったくらいです。
外にいたのは30分弱ほどでしたが、大きな1歩だなと私も看護師さんも感じていました。
そして、それは祖母も一緒だったのかもしれません。
次の日から、祖母のほうから散歩に行きたいと言うようになったのです。
私はそれが嬉しくて、少しはしゃいでしまいました。
風邪を引いてはいけないのでそんなに長く外にいることは出来ませんでしたが、日に日に祖母の顔が明るくなっていったような気がします。
車椅子のおかげで、祖母は少しずつ元気を取り戻すことが出来ました。
そもそも車椅子が無ければ、祖母は散歩に行くことなど出来なかったでしょう。
そう思うと、感謝しなければなりません。
自分の足で歩いているわけではないけれど、ベッドの上から離れたり外に出るだけで全く違うと祖母を傍で見ていて実感しました。
その後もしばらく車椅子生活でしたが、明らかに以前より喋るようになり、気持ち顔色もよくなったような気がします。
食欲も旺盛になって、動かせるところはちゃんと動かしておこうとしていました。
車椅子があったからこそ散歩に出られたわけですし、もしなかったらと思うとどうなっていたか皆目見当もつきません。
もしかしたら、ずっとベッドの上のいるようになっていたかもしれません。
車椅子1つでこんなに変わるのかと思いましたし、きっと祖母のように変わる人もたくさんいたのかもしれないと思いました。
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